つづき
整備士になったきっかけ3より
職業体験四日目
今日も朝から休憩室にあったマンガを読んでいた
とても暇…
この会社にお世話になる一週間だけのためにワークマンでツナギを買ってきたのに、まだ一度も汚れがついていないまっさらに近い状態だ
ふと、仕事が落ち着いたのか工場長がやってきた
「お前ら何かしたいことがあるか」
今まで退屈だった私はその言葉に食らいついた
三日間、暇で何もしてこなかったが興味だけは沸いていた
「オイル交換がしたい」
今度は絶対にさせてもらう、させてもらえなければ今ここにきている意味がない
必死の表情で訴えた
工場長が工場へすぐに連れていってくれた
用意されていたのは工場長の通勤車であるカローラだった
「この車の整備をお前に任せる」
体が爆発しそうなほど嬉しかった
私は人生で初めての自動車整備というものを体験することになる
車をリフトに上げ、オイルを抜いた
もちろん素人中の素人がするオイル交換である
工場長は「少しは助けるが自分で考えながら挑戦してみろ」と任せてくれた
オイルの抜き取り口であるドレンボルトを外した瞬間
「ブシャー」
新品に近いツナギがオイルで真っ黒に染まった
工場長は笑いながら床を掃除してくれた
「わしも初めてのころは同じことになった」
工場を汚してすいませんという気持ちと、エンジンオイルというものを初めて体で触れたことで嬉しいという感情で複雑な表情をしていたと思う
オイル交換が一通り終わり、冷却水の補充をすることになった
今度もまた工場長は「自分で考えて挑戦してみろ」と私に任せてくれた
今思えばお客さんの車ではなく工場長の車であったからこそできたことだ
エンジンルームを見ると噴水のマーク付きのキャップが目に入った
「これだっ」
これは間違いないと思い思い切って冷却水を流し込んだ
ほめてもらおうと工場長の顔を見た
「あちゃー」
工場長は苦笑いしている
それはウォッシャー液のタンクであった
当時ユーチューブも普及していなかったため車の整備というものを全く見たことがなかった
すべてが初めての状態
何をするにも失敗しかしない
そんな中学生に挑戦させてくれた工場長はすごい心の広い人であった
一日の業務が終わり、帰るあいさつをして廻っていた頃
工場長がウォッシャータンクに間違って入れられた冷却水を抜いていた
「今日はすいませんでした」と謝った私に
「人間失敗しないと成長できないから気にするな」と工場長は言ってくれた
今まで人生でいろいろなことを体験してきたが、この一日がすごく印象に残っている
なぜだろうか
人間、記憶に深く残ることはやはり「失敗」ということなのであろう
「失敗=成長」
私の中の人生で大きく成長できた一日になったことは間違いない
整備士という仕事が少し好きになってきたかもしれない
整備士になったきかっけ5へつづく


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